不動産投資に使える!DCF法で不動産の価格を計算してみよう!

J-REITをはじめとする不動産ファンドは、投資家から預かった資金を不動産に投資し、賃料収入売却益を還元します。

 

当然投資家は、自己資金を投入しているわけですから、預けた資金がしっかりと投資に割り当てられているのか、投資対象資産は収益を上げているのか、そもそも投資せずに資金を他の用途に使用してはいないか、といった不安が募りますが、これはIR情報で報告されます。

 

J-REITのIR情報では、第三者である不動産鑑定士が投資対象資産の適正な価格を判定し物件にお墨付きを与えるのです。

 

ここでは不動産鑑定士がどのようにお墨付きを与えているかについて、実際にキャッシュ・フロー表を用いてDCF法による価格を算出してみます。

1.キャッシュ・フロー表

早速、以下のキャッシュ・フロー表をみていきましょう。

 

小規模のオフィスビルを想定し、DCF法による価格を算出してみました。

 

DCF法とは、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法(Discounted Cash Flow法)をいいます。

 

DCF法は収益還元法の一種であり、収益還元法は、直接還元法(一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法)とDCF法に大別されます。

 

実務では、両者の中庸値をもって鑑定評価額とすることが多いです。

 

なお、DCF法については、4年目以降は予測の困難性が伴うため、よほど確実なCFでない限り、3年目までにCFの変動予測を反映することとなります(建物公租公課については例外です)。

2.各項目の説明

ここからは、各項目の説明をしていきます。

運営収益

 

賃料収入

テナントから徴収する賃料の収入

ここでは満室を想定して、空室率については後述する空室等損失で差し引いていきます

(※)2・3年目:現行賃料が割高なため2年目に2%・3年目に1%下落を想定

 

共益費収入

テナントから徴収する共益費の収入(実質的な賃料)

賃料収入と同様、満室を想定空室等損失で差し引きます

(※)2・3年目:賃料収入と同様、2年目に2%・3年目に1%下落を想定

 

水道光熱費収入

テナントから徴収する貸室部分共用部分に係る水道光熱費の合計(貸室部分はテナントが自ら支払う場合も多い)

賃料収入と同様、満室を想定空室等損失で差し引きます

(※)2・3年目:賃料収入と同様、2年目に2%・3年目に1%下落を想定

 

駐車場収入

テナントから徴収する駐車場の収入(月極、時間貸しなど)

(※)2年目:新規契約に伴う増額を想定

 

その他収入

上記に該当しない収入(看板設置料、自販機設置料、電柱設置料など)

ここではテナントが出している看板設置料を計上

 

空室等損失

空室期間中の損失(出て行く費用ではなく入ってこない収入マイナスの収入として差し引く)

賃料収入、共益費収入、水道光熱費収入は満室を想定しているため、ここで空室による損失を計上する

(※)1・2・3年目:1年目は(賃料収入+共益費収入+水道光熱費収入)×8%、2年目は6%、3年目は4%を計上

 

運営収益

賃料収入、共益費収入、水道光熱費収入、駐車場収入、その他収入の合計から空室等損失を差し引いたもので、会計上の営業収益に該当する

 

運営費用

 

維持管理費

清掃、警備、保守点検等に要する費用(ビルマネジメントフィー=BMフィー)

(※)2年目:BM会社との契約変更に伴う増額を想定

 

水道光熱費

貸室部分と共用部分に係る水道光熱費の合計

(※)2・3年目:水道光熱費と同様、2年目に2%・3年目に1%下落を想定

なお、貸室部分はテナントが負担し共用部分はオーナーが負担する場合、水道光熱費収入と同額となる場合がある(通り抜け処理

 

修繕費

日常的な修繕に要する費用

ここでは分析期間5年に要する修繕費を1年ごとに平均的に計上

 

PMフィー

PM会社に対する管理報酬

ここでは賃料の2.5%×稼働率(=1-空室率)を計上

 

テナント募集費用等

テナントの入れ替わりの際に発生する仲介手数料

注意して欲しいのが、空室部分の仲介手数料を計上するということではありません。

考え方としては、現在入居しているテナントが退去する際に、新たなテナントを募集する時に発生する仲介手数料を計上するということです。

ここでは以下の式で計上

「賃料収入の1ヶ月分÷平均回転期間5年×稼働率」

 

公租公課

土地・建物についての固定資産税・都市計画税

ここでは土地・建物ともに固定資産税は課税標準額の1.4%、都市計画税は課税標準額の0.3%を計上

(※)3・6年目の建物公租公課:建物については、減価償却により価値が減っていくため評価額の見直しの年ごとに3%下落を想定

 

損害保険料

火災保険や賠償責任保険料

なお、地震保険は計上しないのが原則だが、PML値(再現期間475年相当の大地震が起きた場合の再調達原価に対する予想最大損失額の割合)が20%を超えると地震保険を検討すべき場合もあります。

 

その他費用

上記に該当しない費用(支払地代、道路占用料など)

ここでは道路占用料を計上

 

運営費用

上記を合計したもので、会計上の営業費用に該当する。

 

運営純収益

運営収益から運営費用を差し引いた額で、会計上の営業利益に該当する。

 

 一時金の運用益

テナントから預かっている敷金をリスクの低い金融商品(国債など)で運用することによる収入

ここでは以下の式で計上

「敷金(賃料の12ヶ月分)×運用利回り1.0%×稼働率」

 

資本的支出

10〜20年に一度必要となる大規模修繕費

ここでは修繕費と同様、分析期間5年に要する資本的支出を1年ごとに平均的に計上

 

純収益

運営純収益に一時金の運用益を加算し資本的支出を差し引いた額で、会計上の経常利益に該当する。

 

複利現価率

割引率4.1%に対応する複利現価率(1.0/1.0+0.041)の複利計算

 

純収益の現在価値

純収益に複利現価率を乗じた額

3.DCF法による価格

いよいよDCF法による価格を求めます。流れは単純です。

 

分析期間5年間の純収益の現在価値合計(A)に売却価格の現在価値(H)を足してやればDCF法による価格が求められます。

 

売却価格はいくらで売れるかという価格ですから、購入者目線で分析しなければいけません。

 

当然、購入者は5年目が終了した後に不動産を保有・運用することになりますから、その次の年以降のキャッシュ・フローを重視します。

 

つまり6年目の純収益(B)を最終還元利回りで除して(C)売却価格を求めていくのです(D)。

 

さらに、仲介手数料として、(D)で求めた価格の3.0%を(D)から差し引き(E)、売却費用考慮後の価格を求めます(F)。

 

最後に、(F)で求めた価格は、6年目の価値を5年目において考慮したものですので、5年目の複利現価率を乗じて(G)、売却価格の現在価値を求めるのです(H)。

 

そして、DCF法による価格は、

A+H=837,000千円- となりました。

4.まとめ

いかがだったでしょうか?

 

DCF法による不動産の評価は、毎期のキャッシュ・フローが明確に示されるため、説明性に優れるとして、REITなどの証券化不動産の鑑定評価では必ず適用することとなっています。

 

一方で、DCF法にも課題があります。

それは、キャッシュ・フローの変動予測が1つのシナリオに限定されていることと、採用した割引率は主観的要素に依存しているということです。

 

現在は、この課題を解決するまでには至っていませんが、これが解決されるとなると、不動産評価の制度は格段と高くなることは間違いありません。

 

不動産投資をする際に、この記事を参考にしてもらえると嬉しいです!

 

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